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News: 西久松友花 群馬青年ビエンナーレ ガトーフェスタハラダ賞 受賞
Jul 10,2025
Yuka Nishihisamatsu
西久松 友花
1992年、京都府亀岡市に生まれる。2016年に京都市立芸術大学美術学部工芸科陶磁器専攻を卒業後、2018年、同大学大学院美術研究科修士課程工芸専攻陶磁器を修了。画家である両親のもとで幼少期を過ごし、自然の中でのスケッチに同行する体験を通して、早くから「観察」と「表現」を結びつける感覚を育んだ。生まれ育った亀岡は、山々に囲まれた地形と寒冷な気候により濃い霧が立ちこめる土地として知られる。その幻想的で時に不可視の世界を思わせる環境は、西久松に深い感受性を与え、後の制作において重要なインスピレーションの源泉となっている。
陶芸を中心とする西久松の作品は、土という最も根源的な素材に対して鋭敏な感覚を持ちながら、豊かな色彩と緻密な装飾性を特徴とする。日本の仏教文化や古代から受け継がれてきた造形物、宗教的なシンボルに影響を受けつつ、それらを単なる引用としてではなく「再構築」や「再解釈」として作品に取り込み、現代の文脈において新たな生命を吹き込むことを目指している。
その根底には、仏教思想に通底する「生と死の循環」への探求がある。かつては遺物や宗教的なイコンを題材にしてきたが、近年ではその視線をより小さなスケールへと移し、川床に棲む微細な虫や肉眼では捉えにくい微生物といった、極小の存在に焦点を当てている。彼女はそれら「目に見えぬ命の痕跡」を土を介して可視化し、その一瞬の生が確かに存在した証を造形へと昇華している。
西久松の制作は、伝統的な陶芸技法に根差しながらも、現代における生の多層性や儚さを表現する試みである。霧に包まれた故郷の風景から、歴史や信仰に連なる記憶、そして微細な生命の営みへ──彼女の作品は、眼前にあるものの奥に広がる見えない世界へと、私たちの感覚を導く。
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